Sunday, November 05, 2006

温暖化:スターン報告書

先日英国財務省が温暖化に関する報告書を発表した。調査の中心になったのは元世界銀行VP兼チーフエコノミストのニコラス・スターン卿で、報告書の名前はStern Report (Stern Review on the economics of climate change)。

スターン氏は1994年から欧州復興開発銀行(主に旧共産圏諸国の援助を行っている国際機関)のチーフエコノミストを勤め、その後2000年に世銀のチーフエコノミストに任命され、2003年に英国財務省に移ったようです。因みに日本は世銀にも欧州開銀にも、多額の資金をつぎ込んでいます(リンク参照)。

まだ報告書自体は読んでいませんが、色々とメディアに取り上げられています(長いです。でも要旨も英語ですが、同じページにあります)。温暖化に対する対処を怠ると、2100年には世界は1930年代よりもひどい大恐慌に陥るだろう、ということを訴えているようです。温暖化を放置すれば損失額は2回の世界大戦以上になるとのこと。(>_<)だから、放置する損失額は対処策のコストを上回るから、さっさと対処しましょう、ということらしい。なるほど。リサーチの内容や手法を疑う研究者も沢山いるようですが、英国政府から出版されているので、さすがにはなから無視するわけにもいかない様子です。ブレア首相は、これまで英国政府が出版した将来に関する報告書の中でもっとも重要な報告書だ、と言い切っています。

将来世界のGDPの20%が犠牲になる可能性があるなら、毎年世界GDPの1%を温暖化対策に支出するのは当然でしょう、という論理なのですが、実際に多額の資金を対処策に回せる国はどれだけあるのだろうか、という懸念は払拭できません。温暖化の被害と対処の負担額が、必ずしも一致するとは限らないので(というか全然一致してないはず)、政治的に微妙な問題です。今の世代の税金等の負担額が巨額になっても、最大の恩恵を受けるのは今の世代の曾々孫辺りでしょうか。これから急成長を続ける中国やインド等と先進国との割り当てをどうするかも、問題です。京都議定書を批准していないアメリカをどうするかも!オーストラリアも批准していないらしいですが、批准しなくても自国の温室効果ガスの排出量は目標レベルまで下げられる、という主張のようです。そう、別に議定書に賛同しなくても、自主的にできればいいんですよね。でもアメリカと大違い...。

今回の報告書の是非がどうであれ、色々なところで騒がれてているようです。発表直後、ニュージーランドのキウィフルーツ等の輸入は運送に燃料が沢山かかるので良くない、と英国の政治家がコメントしたらしく、その意図は本当に温室効果ガスを減らそうということなのか、実は自国の非効率的な農産業を保護しようということなのか不透明である、という新聞記事を読みました。この前のGreen FestivalのGrow local, eat local(地元で自給自足)のスローガンもこの流れなんだろうなぁ。

確か小学校で、輸入なしで天ぷらうどん一杯も作れない国日本って習った覚えが...。どうすればいいんでしょうね、日本みたいな国は!

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